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出産直後から4ヵ月続いている腰痛と股関節の痛み.歩行にも違和感(20代女性)

産後4ヵ月,主婦.発症は第一子出産直後で,腰の痛みで始まった.発症の翌日は左足に力が入らず痛みもあって歩けない状態になった.ふとももの全体的な鈍痛があり,左股関節,足の付け根(鼠径部)の痛みも伴っていた.このときは足の感覚が鈍いような感じもあった. 出産から4ヵ月経った現在も腰部の痛みは続いており,刺すような痛みが骨盤と腰の境目あたりにある.左右差はなく,全体的に感じる.骨盤の関節がカクカクと不安定な感じを特に左側で強く感じる.これによって,歩行時に重心が乗る側に違和感を感じている.腰を反らせると痛みが誘発されるため,猫背になりがち.長時間の座位姿勢の維持で痛みがある.また,両側の足の付け根(鼠径部)の痛みがあり,歩行や座位での誘発がある. 副訴として後頭部の張りと持続的な頭痛.頭痛に伴い眩しい感じがすることもある.中学時代に腰椎ヘルニアの診断を受けているが,レベルは不明.下肢症状が出たことはなかった. 長引く腰痛で抱っこにも支障が出ており,なんとかしなければとリガーレカイロプラクティックへ来院した.

初診時の状態

  • いわゆる反り腰の姿勢.(立位姿勢における腰椎過剰前弯.重心線より前方に股関節大転子がシフト.右腸骨陵,右肩峰共に上方変位)

  • 腰部可動域検査:前屈40°付近で主訴の誘発.後ろへ反らす動作20°で両仙腸関節付近の痛み.

  • 仙腸関節支えた状態で上記可動域検査に伴う痛みやや軽減.

  • 立位から座位,またその逆の動作で腰仙部付近に痛みの誘発.

  • 両腸腰筋の過緊張.特に右側に強く観察された.

  • 頚椎可動域は左回旋に制限が認められた.

1回目 仙骨を中心にマニピュレーションを実施. 骨盤内筋群,下肢筋群,殿筋群に対する緩和操作. 施術後実施した腰部可動域検査での屈曲での痛みの誘発は確認されない. 2回目 1週間後の来院.前回施術以降腰痛は気にならない. 頚部の症状は4日ほど調子がよかったが,すこし症状が戻ってきた. 腰部可動域に問題はみられない.頚部可動域は同様. 継続した施術を進める.頚部症状軽減.ストレッチの指導を実施. 3回〉 腰痛はなし.子供の夜泣きがひどく,首の重さがある. 腰部,頚部共にマニピュレーションを実施. 腰部の症状に関してはストレッチの自宅での実施である程度予防を見込めると判断し,メンテナンスへ移行.

担当 佐々木コメント

産後の症状としては典型的なタイプの腰痛です.産前から産後1-2ヶ月まではリラキシンホルモンの影響で骨盤の関節の支持性が低下し,関節に起因する痛みの発症リスクが上がります.またそのような骨盤を安定させるためにおしりの筋や股関節,骨盤内の筋群の過緊張がみられやすくなり,これも腰痛の増悪に関与していると考えられます.鼠径部や殿部の筋群の過緊張によって,知覚神経や脈管が拘扼・障害されることで感覚低下やしびれがみられることもあります.

この症例でもそうですが,それまでお尻や脚の症状を経験したことのない方でも,妊娠を契機にそういった症状が出てくることは少なくありません.自分がこんなになるとは思わなかった,と仰る方もおられます. とりわけ,この症例のようにもともと腰部に問題がある方は,産前産後に症状が発症/悪化しやすい傾向があります.しっかりとした予防を行っていけば,こうした重い症状の発症を抑えていくことができる可能性が高くなります.特に妊娠初期までに既に腰痛や腰の違和感などの症状がある方は,事前に対処して出産に備えておくことが望ましいでしょう.

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